特定技能(外食)制度とは

特定技能(外食)制度が導入された背景

深刻な人手不足の拡大

日本では少子高齢化が急速に進んでおり、労働力人口が年々減少しています。特に外食業界は、長時間労働といった構造的課題を抱えていたこともあり、若者の就職希望が少なく、慢性的な人手不足に悩まされていました。これにより、営業時間の短縮や休業だけでなく、閉店へとつながる事例も増えていました。

外国人アルバイトの制限

コンビニエンスストアや飲食チェーン店を中心に、留学生などの外国人アルバイトに頼る店舗が増えていましたが、これらの在留資格では週28時間までの就労制限があり、本格的な労働力としての活用が難しいという課題がありました。

政府の制度改革と政策的対応

政府は2019年4月、深刻な人手不足が続く分野において、外国人が即戦力として働ける新たな在留資格「特定技能1号」を創設しました。外食分野はその対象の一つであり、制度化によって正式かつ持続的に外国人を受け入れられる仕組みが整備されました。

技能実習制度では移行対象とされていない職種

従来の外国人雇用制度である技能実習制度では、「外食」は対象職種に含まれておらず、受け入れることができませんでした。つまり、調理や接客などの外食に関連する業務は、制度上「技能移転の対象」と認められていません。

特定技能(外食)制度の概要

項目内容
在留資格名特定技能1号(外食業分野)
対象職種飲食店のホール・調理スタッフ、ファストフード、レストラン、居酒屋など
必要条件外食業技能測定試験の合格
日本語能力試験N4以上(または国際交流基金日本語基礎テスト)
雇用形態フルタイムの直接雇用(派遣不可)
在留期間最長5年間(1年または6か月ごとに更新)
同伴家族不可

特定技能(外食分野)における業務、就労先

特定技能1号では、外国人材に対して即戦力としての実務能力が求められます。

業務内容としては、接客や調理補助などが中心であり、具体的には、来店客の案内や注文の受付、レジでの会計対応、テーブルの片付けや清掃といった接客業務のほか、食材の仕込みや下ごしらえ、簡単な調理、盛り付け、食器洗浄、厨房内の清掃といった調理補助的な業務も含まれます。

外食分野として認められる就労先は明確に定義されています。顧客に料理や飲料を提供し、客席を有する飲食店であることが条件とされ、社員食堂などの給食施設や食品工場、コンビニエンスストアの厨房業務などは対象外とされています。つまり、レストラン、居酒屋、ファストフード店、カフェなどの一般的な飲食店が制度の対象となります。

具体的な飲食店の事例等

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分類飲食店例
和食等寿司(回転ずし、立ち食い寿司等)、そば、うどん、天ぷら、うなぎ、とんかつ、丼もの(親子丼・カツ丼・天丼)、おでん、釜めし、お好み焼き、もんじゃ焼き、牛丼・豚丼、和定食屋、和風居酒屋、精進料理、郷土料理
居酒屋等大衆居酒屋、立ち飲み
洋食等洋食屋(ナポリタン・オムライス)、カレー(インド・欧風・スパイス)、パスタ、ピザ、グリル料理、ローストビーフ丼、オムライス専門店、ハヤシライス
肉類提供等焼肉、ステーキ、ハンバーグ、ジンギスカン、串焼き(焼き鳥・もつ焼き)、焼きとん、肉バル、鶏料理専門店(水炊き・唐揚げ)
鍋・煮込み等寄せ鍋、湯豆腐、すき焼き、しゃぶしゃぶ、もつ鍋、水炊き、ちゃんこ鍋、チゲ鍋(スンドゥブ・キムチ鍋等)
麺類等ラーメン(醤油・味噌・塩・豚骨・家系)、油そば・まぜそば、きしめん、つけ麺、冷麺

特定技能(外食)人材の要件

この制度では、外食業に関する技能試験と日本語能力に関する試験に合格することが基本条件とされています。具体的には、「特定技能1号技能測定試験」において接客・調理・衛生管理の基礎的な知識や実技力が問われ、日本語能力については「日本語能力試験N4」以上、または「国際交流基金日本語基礎テスト」の合格が求められます。

このように、採用前に一定の基準をクリアした人材を雇用できるため、受入れる企業側にとっても一定の安心感があります。

特定技能(外食分野)の雇用条件

雇用形態については、フルタイムでの直接雇用が原則であり、派遣や短時間雇用、日雇い契約などは認められていません。また、留学生アルバイトと異なり、労働時間の制限がないことも特徴の一つです。

在留期間は、1年単位での更新が可能で、最長で5年間の在留が認められます。なお、この在留資格では家族の帯同は認められていません。

特定技能1号(外食)の要件

外国人本人に求められる要件

技能要件

  • 特定技能1号技能測定試験に合格していること

日本語能力要件

以下のいずれかに合格していること

  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上
  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

※いずれも日常会話レベルの理解が求められます。

年齢制限はなし

年齢制限はありませんが、労働契約を結ぶためには原則として18歳以上が現実的です。

外食業・飲食店での特定技能人材活用ポイント

人手不足の根本的な解消につなげる採用設計

  • 特定技能人材は週28時間制限のある留学生アルバイトと違い、フルタイムで安定的に就労できるため、シフトの安定や業務の平準化につながるメリットがあります。
  • パート・アルバイト中心の店舗で、中核人材として定着させやすいメリットもあります。

外国人スタッフを活かす店舗運営体制の整備

  • 店舗内での日本語マニュアルの整備や、図解を活用した教育ツールの導入で、スムーズな業務習得が可能になります。
  • 外国人社員向けの相談窓口や、定期的な面談の場を設けると、定着率の向上につながります。

待遇格差のない制度運用

  • 同一職場で日本人と外国人で待遇差があると、職場の不満・トラブルの要因になります。
  • 日本人スタッフと同等以上の報酬や福利厚生を整えることで、外国人材も職場の一員として正当に評価され、他の従業員からの理解と受入れが得られやすくなります。

受け入れ体制の明文化・組織化

複数の店舗を展開している運営会社においては、各現場に任せきりにせず、運営本部が主体となって受け入れマニュアルや制度対応に関するガイドラインを整備することが重要です。

また、多店舗展開しているチェーン店では、本部が一括して支援機関や行政との対応を行える体制を構築することが求められます。